「東海道中膝栗毛」「東海道五十三次」に見る【東海道宿場町めぐり】駿州二峠八宿の歴史&おすすめ土産ガイド

大河ドラマの放送を機に、江戸時代の出版文化を牽引した蔦屋重三郎に注目が集まっています。
彼の元で下積みをしていた人物の一人で、後にベストセラー作家となった十返舎一九による滑稽本「東海道中膝栗毛」。
弥次さん、喜多さんの珍道中を描いた本作は、当時の庶民の心を掴み、一大旅行ブームを巻き起こしました。
今回は、江戸時代の旅文化を今に伝える「東海道中膝栗毛」と歌川広重の浮世絵「東海道五十三次」の中に登場する「駿州」エリアの魅力をご紹介します。
駿州二峠八宿とは?
「東海道中膝栗毛」や「東海道五十三次」で描かれた「駿州地域」(現在の静岡市、藤枝市)は、重要な舞台の一つ。
この地域には、「二峠八宿」と呼ばれる二つの峠と八つの宿場町が点在し、滑稽本や浮世絵に描かれた風景や名物が今もなお、当時の面影を残しています。
2020年にはこの地域が「弥次さん喜多さん、駿州の旅」として日本遺産に認定され、その文化的価値が改めて評価されました。
「駿州堂」とは?
「駿州」の旅の魅力を伝えるものの一つとして「駿州堂」ブランドがあります。
これは地元事業者が中心となり、「江戸時代の旅を感じられる商品」をコンセプトに開発されたオリジナルの土産物や飲食メニューです。
各宿場ならではの商品がラインナップしているので、一緒に旅の思い出にしてみてください。
「二峠八宿」を回ってみましょう
「駿州」の歴史と文化に触れる「二峠八宿」。静岡市から順番に、その宿場に関連するおすすめの「駿州堂」をご紹介します。
蒲原宿 (かんばらしゅく) <最寄駅・JR新蒲原駅より徒歩7分>
静岡県内で唯一「歴史国道」に指定された蒲原宿。
富士川を越え、駿河国に入った旅人が最初に迎える宿場町として、多くの旅人が行き交いました。
歌川広重の浮世絵「東海道五拾三次之内 蒲原 夜之雪」では雪景色ですが、実際の蒲原は温暖な気候。
蒲原宿は平安時代の延喜式にも登場するほど歴史は古く、1701年の高波被害で現在の位置に宿場を移転しましたが、「鉤の手」に曲がる狭い道や、なまこ壁、古い民家など、江戸情緒が今も残っています。
駿州堂
だし屋西尾商店<最寄駅・JR新蒲原駅より徒歩9分>
西尾商店の「いわし削りと花かつおセット」は蒲原宿の銘品として有名です。
かつお節のように出汁に使ってもよいのですが、やさしい口当たりなので、そのままご飯やお豆腐などにかけて食べて味わっていただきたいです。
由比宿 (ゆいしゅく)<最寄駅・JR由比駅より徒歩24分、車で5分>
東海道16番目の宿場町、由比宿は、県内22の宿場の中で最も小さい宿場です。
由比本陣公園には日本で最初に広重の名を冠した「静岡市東海道広重美術館」があり、広重の浮世絵約1400点を収蔵。
また、由比漁港は「桜えび」の水揚げ量日本一を誇り、新鮮な桜えびを使った料理は絶品です。街道沿いの多くの店で、お土産や桜えび料理が楽しめます。
かつて弥次さん喜多さんもその賑やかな呼び込みで宿を避けて行ったと言われるエピソードがありますが、今はのんびりとした雰囲気。ぜひ訪れてみてください。
駿州堂
正雪 特別本醸造(株式会社神沢川酒造場)<由比宿より徒歩10分・車で1分>
神沢川酒造場が醸す「正雪 特別本醸造」は、由比宿の銘酒として親しまれています。
この酒はすっきりとして、香り高く、冷酒でも熱燗でも、どんな料理にも合うので、お土産やお家で楽しむのにも最適です。
興津宿(おきつしゅく)<最寄駅・JR興津駅より徒歩14分>
清見寺
東海道17番目の宿場町、興津宿。東から来た旅人は薩埵峠越えの疲れを癒し、西へ向かう旅人は峠越えの準備をする場所でした。
駿河と甲斐を結ぶ身延道との交差点でもあり、交通の要衝として賑わった宿場町です。
興津宿には、徳川家康公ゆかりの清見寺があります。
家康公が幼少期に学んだことから「手習いの間」が復元されており、また家康公が接ぎ木をしたと伝わる臥龍梅など、歴史を感じさせる史跡が残っています。
薩埵峠(さったとうげ)
興津宿は薩埵峠の麓に位置しています。展望台からは、駿河湾や富士山を一望できます。自然豊かな場所で、眺めは素晴らしく、歌川広重の浮世絵「東海道五拾三次之内 由井 薩埵嶺」にも描かれた絶景が今もなお楽しめます。
由比宿と興津宿にある薩埵峠玄関口の「間の宿西倉沢」や「小池邸」はその当時の面影が残っており、立ち寄りたい場所です。
江尻宿(えじりしゅく)<最寄駅・JR清水駅より徒歩12分>
東海道18番目の江尻宿は、清水港を擁し、江戸への物資輸送の拠点として栄えました。広重の浮世絵にも、多くの帆掛け船が行き交う様子が描かれています。
江尻宿と言えば、三保松原。富士山と駿河湾、松林が織りなす絶景は、国の名勝第一号に指定されたほど。多くの観光客が訪れるフォトスポットです。
宿場町には、三百年の歴史を持つ名物「追分ようかん」も。竹皮に包まれた蒸し羊羹は、旅の疲れを癒す優しい甘さです。
弥次さん喜多さんも、雨上がりの江尻宿で馬子との会話に興じ、心地よい眠りに誘われたとか。歴史と絶景、そして名物を満喫できる江尻宿へ、ぜひどうぞ。
駿州堂
河童の屁、河童せんべい(甘静舎) <江尻宿より徒歩5分>
甘静舎(かんせいしゃ)の「河童せんべい」と「河童の屁」。そのユニークな商品名は、江尻宿の「河童伝説」にちなんだものです。
甘静舎の9代目の女性菓子職人が作る練り切りのほか、他にも店内には、河童の顔をかたどった「河童まんじゅう」や「河童どらやき」も人気商品。また、店内では甘味を味わえるので、旅の途中にひと休みしてみては。
府中宿(ふちゅうしゅく) <最寄駅・JR静岡駅徒歩10分、静岡鉄道新静岡駅徒歩2分>
府中宿は、東海道最大の宿場町として、かつて大いに賑わいました。
徳川家康公が駿府城を築き、城下町を整備したことで、「駿府九十六ヶ町」と呼ばれる美しい街並みが形成されました。家康公が元服を行ったとされる静岡浅間神社や駿府城公園など、家康公ゆかりの史跡が点在しています。
また、府中宿は「東海道中膝栗毛」の作者、十返舎一九と主人公の弥次さんの故郷でもあります。
駿州堂
二葉葵のこみち(三坂屋本店)<最寄・静鉄バス妙見下駅すぐ>
三坂屋本店の「二葉葵のこみち」は、駿府城跡にある石畳の「双葉葵の小径」をイメージしたバタークッキーです。
ぎっしりとナッツ入りのキャラメルクリームが挟まれており、ザクザクとした食感で、お茶にあいます。JR静岡駅隣接の駿府楽市でも購入できます。
丸子宿 (まりこしゅく)<最寄・静鉄バス丸子橋入口より徒歩4分>
丁子屋
東海道20番目の宿場町、丸子宿。宇津ノ谷峠の麓に位置するこの地は、古くからとろろ汁が名物として知られています。
江戸時代の旅人も、峠越えの疲れを癒すため、自然薯をすりおろしたとろろ汁を味わったとのこと。その様子は、歌川広重の浮世絵「東海道五拾三次之内 鞠子 名物茶店」にも描かれています。
現在もなお、創業400年を超える老舗「丁子屋」が、当時の味を今に伝えています。
丸子宿の傍らにそびえる宇津ノ谷峠は、古くからの難所として知られ、「今昔物語集」にも登場します。石畳の旧道は、当時の面影を今に伝える貴重な遺産です。
駿州堂
丁子屋のとろろ汁セット <丸子宿から徒歩4分>
丸子宿の名物・とろろ汁といえば「丁子屋」。ここで提供されるとろろ汁は、地元の自然薯を使った代表的な料理で、卵と味噌、鰹節のだし汁で仕上げています。400年続く老舗で、これまで多くの方に愛されてきた味です。
ちなみに、「東海道中膝栗毛」では、弥次さん喜多さんはとろろ汁を食べ損ねていますので、私たちが変わって味わってあげましょう。
住所:静岡県静岡市駿河区丸子7-10-10
電話番号:054-258-1066
営業時間:月〜金11:00〜14:00、土日祝11:00〜15:00(LO)、16:30〜19:40(19:00LO)
定休日:木曜、月末の水曜、他不定休あり
料金:1,760円〜(料金は「丸子(まりこ)」とろろ汁・麦めし・味噌汁・香物・薬味)
駐車場:80台
とろろ汁の丁子屋
体験してみよう
駿州の工房_匠宿(すんぷのこうぼう たくみしゅく)で竹細工 <丸子宿から徒歩12分>
「匠宿」は、国内最大級の伝統工芸の体験施設で、実際に陶芸、染め物、陶芸などが体験できる施設です。その中でも、「駿河竹千筋細工」は、国の伝統的工芸品にも指定されている静岡ならではの竹細工。
竹細工の体験は全国でも珍しく、この匠宿では、日常遣いできる雑貨類が竹細工で作れます。
コースターや小物入れなど20種類以上から選べて、仕上がりは、本当に美しいデザイン。自宅のインテリアとしてもおすすめです。
住所:静岡県静岡市駿河区丸子3240-1
電話番号:054-256-1521
営業時間:10:00〜19:00
定休日:月曜(月曜が祝日の場合は営業・翌平日休日)、年末年始
料金:入場無料、竹細工の体験1,900円〜(作品によって料金が変わります)
駐車場:無料駐車場あり
駿府の工房 匠宿
宇津ノ谷峠 (うつのやとうげ)
歴史の道百選にも選ばれていて、現在も、多くの人や物が行き来する交通の要衝として主要な道路6本と4つのトンネルがあります。
岡部宿(おかべしゅく)<最寄・静鉄バス岡部宿柏屋前より徒歩1分>
岡部宿は、宇津ノ谷峠を越えた旅人が、ようやく一息つける場所です。東海道21番目のこの宿場町は、小さな規模ながら多くの旅人で賑わいました。
江戸時代の面影を残す「大旅籠柏屋」は、当時の旅籠の様子を今に伝える資料館となっています。弥次さん喜多さんが女将のおもてなしを受ける様子も再現され、江戸時代の旅を追体験できます。
宿の東口にある旅の安全を祈願する旅人が訪れた場所の「十石坂観音堂」のほか、宿場を代表する旅籠「柏屋」や「岡部宿内野本陣跡」など、歴史を感じさせる建物も魅力です。
岡部宿から藤枝宿へと続く松並木は、当時の旅路を彷彿とさせます。
体験してみよう
岡部宿大旅籠柏屋(おおはたごかしばや)<岡部宿から徒歩0分>
「お風呂の歴史体験棟」や、江戸時代の旅とお風呂について知ることができ、土日、祝日限定で、五右衛門風呂を模した足湯を体験できます。
住所:静岡県藤枝市岡部町岡部817
電話番号:054-667-0018
営業時間:9:00〜17:00(入館は16:30まで)
定休日:月、木曜(祝日の場合は翌日)、年末年始
料金:大人300円(中学生以下は無料)※主屋歴史資料館入館以外は無料
駐車場:あり
岡部宿 大旅籠柏屋
駿州堂
初亀大吟醸酒粕アーモンド(物産館かしばや)<岡部宿より徒歩1分>
「初亀大吟醸酒粕アーモンド」は、静岡県内最古の酒蔵、初亀醸造の大吟醸の酒粕でアーモンドをコーティングしています。
そのため、香ばしくサクサクした食感でつい食べすぎてしまいそうになります。
住所:静岡県藤枝市岡部町岡部817
電話番号:054-667-5211
営業時間:9:00〜17:00(都合により閉店時間が早まる場合もあり)
定休日:月曜(祝日の場合は翌日)、年末年始
料金:大人300円(中学生以下は無料)※主屋歴史資料館入館以外は無料
駐車場:あり
初亀大吟醸酒粕アーモンド
藤枝宿(ふじえだしゅく)<最寄・静鉄バス上伝馬より徒歩1分>
藤枝宿は、田中城の城下町として栄え、徳川家康が鷹狩に訪れた地としても知られます。田中城下屋敷は、全国的にも珍しい円郭式の城郭。
また、宿場町の中央に位置する大慶寺には、日蓮聖人お手植えと伝わる「久遠の松」があり、旅人の目印となっていて、今も雄大さは有名です。
他にも、お茶、椎茸、米、海産物など、山海の幸が集まる市場として賑わいました。広重の浮世絵には、往来する荷の積み下ろしで活気づく問屋場が描かれています。
弥次さん喜多さんも、この地で一騒動。名物の染飯を巡り、愉快な出来事があったとか。
藤枝宿は、お茶やしいたけ、米、海産物が集まる市場として栄えました。この地域は、その豊かな食文化で知られており、多くの人々に愛されています。
体験してみよう!
久遠の松(大慶寺)<藤枝宿より徒歩3分>
大慶寺の境内にある「久遠の松」は、樹齢770年を超え、静岡県の天然記念物に指定されています。
その大慶寺は、あの田沼意次が失脚した後に、相良城御殿を移築した客殿もあります。
客殿には、セルフ喫茶「一休茶房」があり、瀨戸谷の煎茶、久遠の松ブレンドティー、コーヒーなどをセルフサービスで利用できます(6:00〜18:00の開門中)。
住所:静岡県藤枝市藤枝4-2-7
電話番号:054-641-1229
営業時間:6:00〜18:00(開門時間)
定休日:無休
料金:境内は自由に出入りできます 駐車場:あり
久遠の松(大慶寺)
駿州堂
しいたけおむすび(とんがりぼう)<藤枝宿より徒歩11分>
近代建築の旧藤枝製茶貿易商館を利用したカフェ&ショップで提供されるしいたけのおむすび。
甘辛く煮た干ししいたけを具材に、手火山造りのおかかと糸唐辛子をトッピングされています。
住所:静岡県藤枝市若王子701-1
電話番号:080-3642-3955
営業時間:10:00〜17:00(ランチ11:30〜14:00) 11〜2月は16:30まで
定休日:火曜日(火曜日が祝日の場合は翌日)
料金:1380円 駐車場:蓮華寺池公園の駐車場を利用
とんばりぼう
駿州堂
弥次喜多まんじゅう(紅家)<藤枝宿より徒歩1分>
紅家(べにや)さんは、江戸時代初期から続く老舗。昔ながらの製法を守って、一つひとつ手づくりをしています。
「弥次喜多まんじゅう」は酒好きの弥次さんにちなんだ酒まんじゅうと、甘いものが好きだった喜多さん好みの味噌まんじゅうのセット。
店内では、十返舎一九の子孫から譲り受けたすりこぎを展示しています。
「駿州堂」では他にもお土産にしたい!食べたい!銘品がたくさん。
紹介した駿州堂ブランド以外にも、弥次喜多さんにちなんだ食事処とメニューがあったり、 スイーツだけでなく、お茶やせんべい・あられ、おでんなどなどバラエティに飛んでます。
どれもその背景があるので、背景やこだわりを知った上で選ぶとさらに楽しくなりそうです。
まとめ
江戸時代から長く愛されてきた東海道の旅。「日本遺産」にもなっている「駿州二峠八宿」にスポットをあてて、弥次喜多さんの気分になって、訪れてみてはいかがでしょうか?
提供;駿州の旅日本遺産
